経営コンサル歴21年の所感
過去21年間、3000社以上の中小企業のご支援をしてきましたが、うち9割以上は建設業です。当初は、平成10~11年の経審大改正後の「量から質への転換(完成工事高⇒経営内容)」の時期でした。
経営コンサルタントという仕事のため「どの業種が一番儲かるの?」との質問をしばしば受けますが、「儲かる会社(社長)」と「儲からない会社(社長)」があるだけで、業種・時代背景は本質的な問題ではないと思っております。しかしながら、敢えて回答するならば、総合的に「建設業」が最も儲かる業種でしょう。
その理由は、取扱い金額の大きさ、同業種内での協力関係の強さ、重層下請構造で外注化が容易、設備投資がかからない、公共工事の存在、やるべき課題が明白、等々(なお、人手不足はどの業種にも共通の問題点です)。実際、YMTコンサルでは最も成功事例が多い業種のため、結果的に支援先の9割以上を占めることにもなったのです。
参考:国土交通省「平成30年度建設投資見通し」より加工・グラフ化
建設業各社の共通的な特徴
1 |
1物件当たりの請負金額が大きい |
2 |
実際のコストは後に決まる(受注請負産業のため) |
3 | 月次試算表を見ても経営判断できない |
4 | 社外での監督業務が多いため、帰属意識が低下しやすい |
5 | 会議より現場優先、計数・書類が苦手の風土 |
これらの特徴を踏まえた改善策へ
(単位:千円)
企業数(社) | 社員数(人) | 一人当たり売上高 | 一人当たり限界利益 | 一人当たり経常利益 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
建設業 | 建築(木造除く) | 1,223 | 10.5 | 45,939 | 10,888 | 1,990 |
土木 | 2,698 | 13.9 | 20,694 | 10,306 | 1,215 | |
設備 | 7,935 | 11.3 | 20,967 | 9,645 | 1,318 | |
製造業 | 食料品 | 1,453 | 45.1 | 18,356 | 7,489 | 597 |
金属製品 | 2,957 | 22.6 | 18,380 | 9,502 | 1,284 | |
生産用機械機器具 | 1,837 | 21.2 | 20,271 | 10,358 | 1,609 | |
卸売業 | 食料品 | 2,475 | 17.4 | 52,887 | 9,044 | 887 |
建材・金属材料 | 3,404 | 13.5 | 53,344 | 10,615 | 1,545 | |
機械器具 | 2,664 | 13.8 | 50,367 | 10,577 | 1,678 | |
小売業 | 食料品 | 2,572 | 27.5 | 15,391 | 5,018 | 279 |
機械器具 | 2,624 | 12.2 | 34,070 | 9,165 | 794 | |
その他 | 6,791 | 15.2 | 22,367 | 7,202 | 604 |
参考:BAST(TKC経営指標)令和元年指標版より黒字企業を抜粋・加工
上記の表から、
【建設業】一人当たりの限界利益、経常利益ともに全般的に高めの傾向。経常利益では建築工事が最高。
【製造業】一人当たりの売上高が低めの傾向。
【卸売業】一人当たりの売上高は圧倒的に高いが、経常利益では建設業と同等。
【小売業】全体的に一人当たりの経常利益は低めの傾向。
【 全 般 】食料品関係は、製造業・卸売業・小売業とも全て、経常利益は低めの傾向。
建設業改革の重要ポイント ~ 正確な期末予想損益からの対策
中小企業の建設業では「完成引渡基準」で経理処理をするのが一般的ですが、一般の業種とは異なり「月次試算表」は経営資料としてほとんど役に立ちません。そのため仕掛工事(未成工事)の最終予定原価を毎月抽出し、当期の損益への影響度合いを把握をして、客観的な根拠のある『期末予想損益』を作成します。
そして、毎月「業績会議」を開催し、目標損益を達成するためにはどうするか具体的な対策案を決定。「PDCAサイクル」を回していきます。つまり、勝ち組の建設業になるためには『経理機能の強化』が必須の課題となります。
なお、個別の現場、個別の現場代理人では同様の管理を行っているケースもあるでしょうが、会社全体の業績資料に反映させ、どの現場から回復利益を出すか、追加・増工事の獲得、紹介依頼、見込先のランクアップ対策や繰上げ受注など、具体的な対策を決めて実行に移すことが重要です。
未成工事台帳
実行予算 | 実 績 | 予実差異 | |||
---|---|---|---|---|---|
発注済み | 支出予定 | 最終予想 | |||
A工事 | 5,000,000 | 5,200,000 | 300,000 | 5,500,000 | 500,000 |
B工事 | 3,500,000 | 3,500,000 | 0 | 3,500,000 | 0 |
C工事 | 3,000,000 | 0 | 3,000,000 | 3,000,000 | 0 |
合 計 | 11,500,000 | 8,700,000 | 3,300,000 | 12,000,000 | 500,000 |
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月末〆後、10日以内には作成 | |
業績会議を実施。対策案の検討。 |